『創業時(新規事業)の資金調達について』

…資金調達について創業時に正しく理解することが大切です。

統計では、創業・新規開業から3年以内に7割の方が廃業・倒産するというデータが出ています。独立開業を成功させることは本当に難しいことですが、創業融資に関して正しく理解されておれば、この7割の方のうち多くの方が廃業を防げるケースがあるのでは、といつも思います。

■ 創業融資に関して正しく理解していないケース
創業者の中には、そもそも融資を受けるつもりがない方が多々いらっしゃいます。これらの方々は、自己資金だけで事業を黒字化させる計画を立てているため、当初から創業融資に関する情報収集を行っていません。そして、事業が計画通りに進捗しなかった時、つまり創業赤字が想定以上に続き自己資金が枯渇しかかった時点で初めて資金調達に関する情報収集を始めます。しかしながら、当初の計画通りに事業が展開していないときに融資を受けるのは非常に困難であるため、思うように資金調達ができずに事業を断念せざるをないことになります。

創業後、事業を軌道に乗せるまでの間に資金が調達できる機会は、極端に言うと2回しかありません。1回目は創業前か創業してすぐのタイミング、つまり自己資金が十分にあり、かつ事業が計画通りに進捗するか否かまだはっきりしていない時点、2回目は単月黒字化に成功してこれまでの累積赤字が縮小していくタイミングです。1回目の資金調達の機会を逃してしまうと、次は単月黒字化を果たすまで資金調達のチャンスが巡ってこないことを最初から理解していれば、資金不足に陥ってからではなく、創業時に最大限の資金調達を行っていたはずです。もし、上記のように創業時には資金調達が可能な機会はごく限られたものであることを事前に知っていれば、廃業率・倒産率はもっと低いものになっているのかもしれません。

■ 自社の資金調達力を見誤っているケース
資金調達の重要性は理解していても、資金調達が可能な額を見誤っている創業者の方も多く見受けられます。貸し手の立場からすると、前述のように創業者のうち7割の方が3年で廃業すると統計が出ている中では、金融機関の多くが創業者に対して積極的に融資をしたいとは考えにくいです。そもそも創業融資は借りること自体が困難であるにも関わらず、大きな金額を調達できると考えるのは危険です。

例えば、自己資金500万円に対して、事業を軌道に乗せるまでの予算総額3,000万円の計画を立てると、創業融資で2,500万を調達しなければならなくなりますが、一般的に2,500万円を創業融資で調達するのは困難であるため、この事業計画は頓挫する可能性が高くなります。最初の資金調達のタイミングである創業時に2,500万円全額を調達することができれば問題ありませんが、もし1,000万円しか調達できなかった場合、「とりあえずスタートして、資金が枯渇してきたら次の調達先をあたろう。」と考えて事業を開始してしまうと、結局、2回目の資金調達ができるタイミングである単月黒字化が到来する前に資金不足に陥って、事業の継続を断念せざるをえなくなることになります。

創業者の方が大きなビジネスを狙う際の正しい資金調達方法は、調達の機会が「創業時」と「事業が軌道に乗り始めた時」の2回しかないことを理解していれば、必然的に次のようになります。

【間違った資金調達プラン】
総投資額3,000万円、2年で軌道に乗せるビジネスプランで創業時に2,500万円を調達する。(自己資金500万円)

【正しい資金調達プラン】
総投資額は3,000万円だが、ビジネスプランを2段階に分け、第一段階として1,500万円を投資して、1年で軌道に乗せ、創業時に1,000万円を調達する(自己資金500万円)。そして軌道に乗った1年後に、第二段階として追加で1,500万円を別途調達する。

ビジネスにおいては、大きな金額をまとめて調達して、一気呵成に事業を立ち上げたいとの考えも理解できます。しかし、創業時には一度に多額の資金調達は望めませんので、「こまめに実績を上げ、調達回数を増やして調達額を大きくしていく」「小さく生んで大きく育てる」という方法を取らざるを得ません。

2017年09月25日