銀行の本質とつきあい方

 ほとんどの企業が、事業の継続と成長のために銀行(※金融機関を包括して銀行と表現します。)から資金の借り入れをしているので、銀行とのお付き合いは多くの企業にとって必須のものといえます。

 一方、銀行はその貸し出しの原資を預金者からの預金で充当しています。そして預金者は、その預金が100%守られているものと信じています。実際に、銀行が破たんした場合においても、当座預金のような決済性預金であれば全額、それ以外の普通預金や定期預金等でも1,000万円までは保護されています。
つまり、銀行のお金は預金者からの預り金としての性格を持つため、銀行は企業に貸し付けたお金を回収不能にするわけにはいきません。したがって、経営が行き詰まった企業にお金を貸すことは出来ない仕組みになっています。

 上記のことからすると、
・銀行は、企業が厳しいから助けてあげる…銀行の構造上、この発想での貸出しは行えません。
・銀行が融資するのは、企業が成長するための運転資金です。
・銀行が融資するのは、企業が設備投資等を行って長期で回収するためのつなぎ資金です。
あくまでも前向きな資金のみを融資します。国策としての緊急融資等は例外です。

 俗に晴れの日に傘を貸し、雨が降りだせば傘を取り上げると言われるのは上記の所以でしょう。良い悪いではなく、これが銀行の本質です。

 言うなれば、銀行が貸し出すのは全て「日傘」なのです。「雨傘」は一本もありません。

 
それでは中小零細企業はどのようにして銀行とつきあえばいいのでしょうか?

◆資金調達の原則は、晴れの日に借りることです。
・これから事業拡大をするので運転資金を早めに調達しておきたい。
・新たに設備投資を行って生産性を向上させたいので設備投資資金を借りたい。
これが本来の銀行とのお付き合いの仕方です。

◆「業績が厳しいからお金を貸して欲しい」
案外多く発せられる言葉ですが、この言葉は絶対に使ってはいけません。最悪です。
経営が厳しくて資金が回らない、貸してもらえなければ会社がつぶれる。
こんな状況や表現では融資は受けられません。銀行に「雨傘」はありません。
それどころか経営不振が事実であれば預金者の預金を守るため、すでに融資した資金を早急に回収しなければなりません。
これが銀行のあるべき行動です。
「厳しいのであれば融資できません。それどころか、過去に融資した分も早く回収させてもらいます。」
銀行はこう思っています。

◆「…で今は厳しく見える。しかし…で好転するので、そのつなぎ資金を借りたい。」
せめてこの言葉が必要です。これが事実であれば、銀行は融資を検討する義務があります。
それが銀行の使命なのですから。

 繰り返しますが、銀行は困った会社を助けるための救済機関ではありません。預金者から預かった資金を毀損させることなく運用するとともに、経済活動の血液として円滑に循環させるための機関です。
困った企業を助けることも銀行の使命だ…と勘違いされている社長様も少なくありません。お気を付けください。

 以下、銀行法第一条を引用します。上記の解説と併せてご確認ください。
◆参考;銀行法(抜粋)
(目的)
第一条 この法律は、銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため、銀行の業務の健全かつ適切な運営を期し、もつて国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

◆銀行と上手にお付き合いするコツは…
1、前向きな資金需要、前向きなストーリーが必要です。
銀行が融資するのはあくまでも前向きな資金「日傘」であることを理解してください(保証協会の緊急保証付きの融資は例外です)。借入れの申し込み時は、すべて前向きなストーリーを組み立ててください。

2、手元資金を常に、可能な限り多めに維持してください。
晴れている時にたくさん借りておくことが重要です。金利を払ってでも余裕資金を持つ、これが資金管理の要諦です。

3、タイムリーな試算表や良質な決算書の整備が必要です
銀行に対しては、貸出ししても問題がない論拠を数字で示す必要があります。借りるためには理論武装が必要です。また会社の経営状況を常に説明できるようにしなければなりません。そのためには、常に金融機関が貸出しやすい決算書に仕上げておくことも大切です。また最低限3ヵ月毎の試算表は確実に整えておくことも必要です。

◆銀行が嫌う会社とは…
・ウソをつく会社。
・経営状況がわからない会社。
・感情で融資を頼んでくる会社。

◆ それでは本当に経営が厳しい状況に陥った時はどうするのでしょうか?
銀行からの新規の融資は期待できません。
・二期連続の赤字かつ債務超過の状態では100%無理です。
・黒字であっても、借入枠一杯の状態での減収・減益、こんな時も難しいです。

◆ 新規の融資が受けられない時はどうするか?
返済計画の見直し、リスケ(リ・スケジュール)を検討しましょう。
銀行は、厳しい経営状況の会社に追加資金を融資するよりは、返済方法・返済期間の見直しに応じてくれやすいです。
・新規融資が受けられないと判断したら、速やかにリスケ交渉に移行してください。
・銀行は、総じてリスケに積極的ではありません。のらりくらりと時間だけが経過するケースが良くあります。なので、会社側が意思を持ってしっかりと進めてください。
・リスケを承諾する時の銀行側の論理は、『この会社は今は厳しいが、リスケを実行することで持ち直し、近い将来健全な経営状態に戻り、当初の予定通りに返済してくれる』ことです。良くご理解ください。

◆ リスケをする時も前向きな理由が必要です。
銀行は、今も将来もダメな会社と判断した時は回収にかかります。
当社は今はダメでも、将来の見込みがある会社、この理論武装が必要です。

 銀行対応にお悩みの企業様は、ご遠慮なくご相談ください。
 当事務所なら、『他の事務所で出来ない金融機関対応(融資等)でも可能かも知れません。一方、当事務所で無理なら、どこへ言っても無理です。』を目標に日々研鑽しています。
2017年10月11日